
フリーランスの小説家(個人事業主)です。
取材旅行をしました!これって経費ですよね?

不動産賃貸業をしています。
家族で沖縄旅行に行ったので、経費にするために不動産を見てきました。購入はしてません。
経費に出来ますか?

プロカメラマンです。
撮影のために出張で箱根に行きました。ついでに観光をして帰りましたが、どこまで経費になりますか?
税理士事務所では、こんな質問をよく受けます。
弊社は漫画家さんや作家さん、プロカメラマン、不動産投資家等たくさんのお客様がいらっしゃいます。
そんなお客様から「これって経費にできますか?」は実によくあるご相談。
しかし、
「もちろん、それは経費です!」
「それは…経費とは言えませんね…」
「一部経費にできますよ。」
など、お客様の事業内容や状況によっても、経費になるかどうかが全く異なるため、回答もその時々で変わります。
今回はそんな中でも混同しやすい【「フリーランスの旅行と出張」がどこまで経費になるか?】についてお伝えしたいと思います。
目次
経費とは?
まず、経費を語るには、経費の定義についてを確認しましょう。
経費とは
ここで重要なポイントは
- 直接性
- 必要性
- 客観性
- 収益性
この4点が揃っている出費かどうか…ということです。
直接性
直接性は、事業と直接関係あるものであること!ということです。
スポーツジムも、サッカー選手等のスポーツ選手ならば直接関係があると言えるので、経費として認められます。
ペットショップならば、取引するペットがいないと仕事にならないので、ペットの仕入れは経費です。
ですが、「ジムに通えば、健康が維持できてたくさん仕事できるから売上に繋がる」「自宅にペットがいると癒やされて、結果的に売上が上がる」という理由は、直接関係があるとは言えないので、経費にはなりません。
必要性
必要性について。
「これは仕事をする上で必要なものだよね!」と言えるものでないと、経費にはなりません。
例えば、システムエンジニアの人だったら、パソコンやマウス、サブモニター等が該当します。これらは誰が見ても「それがないと仕事にならないし効率下がるよね!」と言えることだからです。しかし、「大好きなアニメキャラのポスター」はやる気を出すために必要かもしれませんが、それがないと仕事が出来ないわけではない、つまり必要性はないと言えます。
客観性
客観性について。
客観性は直接性、必要性は客観的に見て認められるものでなければならない…ということです。
例えば、フリーランスの人が「仕事で自動車に乗るからガソリン代は経費!」と言っても、客観的に見たら「でも仕事以外でも乗るよね?」となります。
ですので、客観的に見ても「この分は、誰が見ても経費!」と主張出来るようにしておくことが大事です。
【仕事で乗ったときはどこからどこまで乗ったか、何時間・何km走ったのか。この車の平均的な燃費は◯L/kmだから、ガソリン代のうち、◯◯円は経費にしてOK!】
と、誰が見ても異論がないようにしておくことが大事です。
(ただし、50%以上は認められません。50%以上を超える場合は仕事用として完全に区別出来るように2つ用意しましょう)
収益性
そして、最後に収益性。
費用は収益を得るための支出を示しますので、一定期間の収益と費用は必ず対応する必要があります。
つまり、【経費には必ず収益がワンセット!】というルールがあるということです。
前提はここまで。
さぁ、冒頭の質問に答えましょう!!
漫画家・作家の場合

漫画家、小説家が取材のために海外を旅行しました。
飛行機代、宿泊代、食事代などがかかり、観光地なども取材で訪れています。
これは経費になりますか?
基本的にはなりますが、ならないケースもあります。
取材をして、その取材を活かした作品を作り、発売・発表。結果「売上につながった!」というのが同じ期中にある場合はそのまま経費にする事ができます。
ですが、重要なのは、その取材がきちんと作品に反映されているかどうか…ということです。
東野圭吾さんの作品で「超税金対策殺人事件」という短編小説があります。
急に売れた小説家が税金対策のために、その年に行った旅行先や買ったブランド品、お風呂の修理代までをもすべて経費にしようとします。結果、北海道の殺人事件の作品だったはずが、ハワイに行ったり、高級ブランドのコートをビリビリに破いたり、草津に行ったり、急にエステに行ったり、ゴルフに行ったり…と、何がなんだかわからない話になってしまう…というもの。私はこれを電車の中で読んでいたのですが、ニヤニヤが止まりませんでした(笑)
超税金対策殺人事件のレビューはもっと書きたいのですが、それは一旦おいておくとして…。
取材が経費になるかどうかは、「作品にきちんと反映されているかどうか」ということが重要です。
『どうしてもその取材の資料がないと書けない(描けない)ものだったのか』ということです。(必要性を問われる)

これ、別にグーグルマップや、インスタなどの写真や動画で代用出来ますよね?
と言われてしまう程度ではだめってことです。
「ご自身の取材のレシートがどこのシーンにどのように反映されたか」(直接性)
「それは客観的に見たときに必要があったのか」
…などが問われると思っていただければと思います。
例えば、ブームにもなった「推しの子」では、主人公の双子の出身地の「宮崎県 高千穂」の現地をすごく丁寧に描写されていました。観光地はもちろん、ただの道までも本当に丁寧に。あんなに丁寧に細かく描写してあったら、現地取材は経費になるんだろうな…と思います。しかも、高千穂町とタイアップしてまちおこしにも協力。道の駅等々ではグッズ販売をしていて収益性もばっちり!
不動産投資家の場合

不動産賃貸業です。
家族で沖縄旅行に行ったので、経費にするために不動産を見てきました。購入はしていません。
経費に出来ますか?
客観的に見れば、「子どもも含めて楽しい沖縄旅行♪」なので、当然家族全員分が経費になるわけはなく、ご家族の分はプライベートと判断されます。
しかし、不動産経営をしてる人の分の一部は経費になる可能性があります。
また、復唱になりますが、経費として認められるためには
- 直接性
- 必要性
- 客観性
- 収益性
この4つが揃うことが重要になります。
客観的に見たときに、「確かに物件の見学をした」と言える証拠が必要です。
それには、物件概要書、調査したときに撮影した写真、不動産業者の名刺、日程表等が必要となります。何日間の旅行のうち、どのくらいの時間を事業拡大のために使ったか…なども記録として残しておくと良いでしょう。これ以外にも具体的に残せるものがあればどんどん残しておくのがおすすめです。
もちろん、虚偽の記録と証明されてしまえば経費計上どころではありません。
悪質と見られれば重加算税にされる可能性があるので、嘘や嵩増しなどは絶対にやめましょう。
くどいようですが、
【客観的に見て「これは家族旅行ではなく、事業だよね」と納得出来る】
ことが大事です。日程から見て、飛行機と宿泊費の◯%を経費にする…等、客観性のある経費割合にするもいいかと思います。
カメラマンの場合

プロカメラマンです。
撮影のために出張で箱根に行きました。ついでに観光をして帰りましたが、どこまで経費になりますか?
中にはほとんど仕事しかしてない中に、ちょこっとだけプライベートが入った…という出張もあるかと思います。ほぼほぼ仕事だけをしていて、ちょっとだけプライベート…という場合、交通費は全額経費にしても問題はないかと思います。
もちろん、観光にかかった費用は経費にはなりません。
また、くどいようですが、経費にするには、直接性、必要性、客観性、収益性の4つがすべて揃う事が大事です。
どんな仕事で、どの売上に結びついているのか、それを明確にしておきましょう。
依頼された仕事ならば、その依頼の記録をきちんと残しておけば問題ありません。
【まとめ】旅費は税務調査で見られる傾向のある経費です!
確定申告のデジタル化に伴い、各業種の売上別で経費の傾向がすでにデータとして出ています。
そして、その中央値や平均値から大きく外れている事業主に税務調査に入る…というのが昨今の税務調査の傾向です。
例えば、不動産業なのに接待交際費や旅費交通費が多く入っていると、「プライベートの分を入れたのでは?」という疑惑を持たれ、結果税務調査を呼び寄せてしまう可能性があります。
ですから、もし「この経費はちょっと数値が高く出そうだな」という経費があったら、税務調査が来ることを視野に入れて、きちんと証拠を抑えておきましょう。
少しでも「これって経費かな?」と疑問に思ったら「直接性、必要性、客観性、収益性」に戻ってご検討頂き、その上で、税理士とご相談いただくのがベストかと思います。