2024年度の税制改正では、中小企業の法人課税に関していくつかの重要な見直しが行われました。特に「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」など、企業の成長支援を目的とした税制措置に変更が加えられています。本記事では、これらの改正点をわかりやすく解説します。
1. 中小企業者の法人税軽減税率の特例見直し
これまで、中小企業に対する法人税の軽減措置として、所得800万円以下の部分に15%の特例税率が適用されていました。
しかし、2024年の改正により、所得が年間10億円を超える企業については、この税率が17%に引き上げられます。また、適用対象法人から通算法人が除外されました。
この改正の影響を受ける企業は、中小企業全体のわずか0.1%程度とされており、政府は次回の適用期限到来時にさらなる見直しを検討する方針です。
2. 中小企業投資促進税制の適用範囲の変更
中小企業の設備投資を促進するための「中小企業投資促進税制」についても見直しが行われました。特に、みなし大企業の判定基準に関する調整が行われ、農地所有適格法人のうち特定の承認会社が50%以上の株式または出資を保有している場合、それらの株式・出資を判定対象から除外する措置が設けられました。
この改正により、特定の農業関連法人が不利な扱いを受けることを避けつつ、中小企業の成長支援が図られることになります。なお、本税制の適用期限は2年間延長され、所得税にも同様の措置が適用されます。
3. 中小企業経営強化税制の変更点
「中小企業経営強化税制」については、以下の点で改正が行われました。
(1) B類型の拡充(経営規模拡大設備)
売上高100億円超を目指す中小企業向けに、工場ラインや店舗などの生産性向上設備を導入する際に、建物も対象資産として追加されました。また、設備投資後の雇用者給与総額が前年度比2.5%以上増加すれば特別償却15%または税額控除1%、5%以上増加すれば特別償却25%または税額控除2%が適用されます。
(2) A類型の要件変更
生産性向上設備(A類型)については、旧モデルと比較して年平均1%以上の生産性向上が求められます。生産性の評価基準として、単位時間当たりの生産量、歩留まり率、投入コスト削減率のいずれかが採用されます。
(3) B類型の要件厳格化
投資利益率の基準が従来の年平均5%以上から7%以上へと引き上げられました。これにより、より収益性の高い設備投資が求められることになります。
さらに、暗号資産マイニング業に使用される設備は対象資産から除外されるなど、一部の業種・設備に対する制限も強化されました。
まとめ
今回の税制改正は、中小企業の成長促進を目的としつつも、高収益企業への優遇措置を一部見直す内容となっています。特に、法人税軽減税率の変更や、中小企業投資促進税制の適用範囲の調整は、多くの企業に影響を与える可能性があります。
これらの改正内容を踏まえ、自社にどのような影響があるのかを確認し、早めの対応を進めることが重要です。適用要件の見直しや、新たに加わった税額控除の活用を検討しながら、戦略的な税務対策を行いましょう。