こんにちは。税理士法人YFPクレア 営業部の越尾です。
昨今は物価高と円安で家計がやばい人多くないですか?我が家は圧倒的に外食が減りました。代わりに手軽に何日間も食べられるカレーが増えました。子どもも気づかずに野菜もお肉も食べますし、平日に手抜きしたい共働きには有り難い食べ物です。
では、今回は基礎控除の歴史をお話をします!
- 1. 基礎控除とは?
- 2. では、基礎控除って今までどうしてた?【歴史をたどる】
- 2.1. スタートは1947年 4,800円
- 2.2. 1948年 10,325円
- 2.3. 1950年 25,000円
- 2.4. 1960年 90,000円のまま(4年間)
- 2.5. 1965年 127,500円 この金額の根拠とは!?
- 2.6. 1970年 18万円
- 2.7. 1980年 29万円
- 2.8. 1987年・1997年 消費税導入時・増税時に引き上げ
- 2.9. 2020年 48万(ただし所得税の103万円の壁は変わらず)
- 3. 23年の空白!
- 4. では1997年の最低賃金は!?
- 5. 130万円の壁も早くして欲しい。
- 6. 2020年から所得制限開始(※要注意)
- 7. 1965年の大蔵省メニューは果たして妥当か!?
- 7.1. 1日の合計コスト
- 8. 基礎控除の歴史から見えたこと
- 9. 【まとめ】基礎控除は歴史的に見ても、現状を踏まえてあげてきた控除!
基礎控除とは?
基礎控除とは、誰もが生活に困らないように、生活にかかる最低限の費用は税金をかけないで上げましょうね!というものです。憲法第25条 生存権「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が認められており、それを税制に落とし込んだものです。ですから、災害や強盗等の被害もなく、ごくごく平凡な日々に慎ましやかに生きるための費用だと思って下さい。
控除額は2,400万円以下ならば、48万円です。
慎ましいですね・・・。
基礎控除について調べると多くのサイトで「誰でも適用できる所得控除」と書かれていますが、実際には所得2,500万円を超える人には使えないものです。
ちょっとまって!!年間48万円ってどんな生活よ!?
48万円で年間生活できる人ってどんな人だろう・・と考えると、
- 家賃、住宅ローン不要で住む家があり
- 水道光熱費+食費+衣服+医療代が月額4万円
という素晴らしい家計の方です。
私は横浜市に一人暮らしをしていたときは家賃7万円(事故物件疑惑あり)に住んでいたので、家賃だけでオーバーしました。
大阪市に住んでいたときは4万2000円で墓とラブホに挟まれて住んでいました。隣の部屋のテレビの音がよく聞こえました。
何が言いたいのかというと、
48万円で健康で文化的な最低限度の生活をできる人のほうが少ないのでは!?コレは税制を学び始めた約10年前もおかしいと思いました。
でも、ネットを見ていると、48万円で最低限度の生活できるぜ!という方もいらっしゃるみたいなんです。地方の方で、親の持ち家に住み、自分の畑で野菜を作って収穫していると…。
確かに、日本は広い国ですから、いろんな生活をしている人がいて当然!
昔も今も、いろんな人がいて、いろんな生活があるのですから、一概に48万円で生活できるかアホー!!!といえないのだと感じました。
そこで、今までの基礎控除の決め方をどうしてたのか!?調べてみました。
では、基礎控除って今までどうしてた?【歴史をたどる】
スタートは1947年 4,800円
基礎控除のスタートは1947年で4,800円だったそうです。
「納税者本人や配偶者・扶養親族の生活維持のため最低限の収入を守る」という趣旨の元、開始された制度です。
生存権を記載した日本国憲法は1947年5月3日施行ですから、公布された1946年11月3日から議論がされたのでしょう。
当時の物価を考えれば妥当なのかな?と思ったのですが、マスコミ含めて「そんな少ない金額で生活できるかアホ!!」と不満の大合唱だったようです。
1948年 10,325円
あまりにも顰蹙をかったため、翌年には2倍以上に跳ね上がります。
生存権を根拠にしながら、生活出来ない控除額ならそうですよね…
その後も引き上げは続きます。
1949年 15,000円
1950年 25,000円
まだまだ引き上げは続きます。
基礎控除が安すぎて顰蹙を買うのは今も昔も同じのようですが、こまめに変更するあたりは好感がもてるのは私だけでしょうか?
1950年 25,000円
1953年 60,000円
1954年 67,500円
1955年 75,000円
1957年 87,500円
1958年 90,000円
1960年 90,000円のまま(4年間)
1962年 100,000円
1963年 110,000円
1964年 120,000円
1965年 127,500円 この金額の根拠とは!?
基礎控除額について、議論が止まぬ中、根拠のある数字を出そう!ということで食と食以外の2つに分けて、年間の生活最低限の金額を算出します。
【食】「大蔵省メニュー」という成人男子が健康な身体を維持できるための献立をもとに1年間の食費を算定。
国立栄養研究所に依頼に1日2500kcalになるメニューを作ってもらい算定。
その献立は春夏秋冬別に作られたそうです。気になる献立は…
朝:ごはん(170g)・京菜のみそ汁・やきちくわのおろしあえ・たくあん
昼:なっとう・チャーハン・京菜のおひたし・たくあん
夜:ごはん・いかと野菜のみそに・わかめのすまし汁・たくあん・リンゴ
【食以外】エンゲル係数で除して最低生活費を求める。このメニューによる20~27歳の年間食費60,096円、年間生活費185,025円。
これらから計算されました。後ほど、コレについてはまた考察したいと思います。まずは歴史を伝えます。
その後も物価や賃金上昇に合わせて基礎控除額は上がっていきます。
1966年 14万円
1967年 15万円
1968年 16万円
1969年 17万円
1970年 18万円
ここまでは毎年基礎控除を見直してきました。
ここからは少しずつ間隔が開くようになってきます。
1971年 20万円
1973年 21万円
1974年 24万円
1975年 26万円
1977年 29万円
1980年 29万円
1977~1982年まで基礎控除は29万円でした。
1983年 30万円
1984年 33万円
1987年・1997年 消費税導入時・増税時に引き上げ
1987年 消費税導入時に35万円
1997年 消費税5%引き上げ前に38万円
(ここから23年間変化なし!!!空白の23年間!!!)
2020年 48万(ただし所得税の103万円の壁は変わらず)
2020年に48万円になります。但し、給与所得控除が-10万円なので、給与所得者の控除額は1997年から変わっていません。その上、所得2500万円以上には所得制限がかかりました。
参考資料:日本公認会計士協会|個人所得課税における課税最低限について
税経新人回全国協議会|目から鱗の所得税基礎控除の変遷
2024年 178万円になるか!?27年の沈黙を経て、国会が動いた!!
23年の空白!
なんとびっくりなことに、1947年から毎年のように、間があいても5年程度で基礎控除を引き上げていたのにもかかわらず、23年間も引き上げられていません。2020年の引き上げでは、給与所得者にある「給与所得控除」が10万円引き下げられているので給与所得者にとっては1997年から2024年の27年間、引き上げられていないことになります。
では、ここで1997年がどんな年だったかを思い出していただきましょう。
- 山一証券自主廃業
- ペルー日本大使公邸人質事件
- 神戸連続児童殺傷事件
- 香港、中国に返還
- 消費税5%になった
- ダイアナ元皇太子妃が交通事故死
- 安室奈美恵さんのCAN YOU CELEBRATE?がヒット
- KinKi Kidsがデビュー。硝子の少年がヒット
ああそんな年もあったよね。。。と思うアラフォー以上の方も多いと思います。あの頃から控除が変わっていないということです。
安室ちゃんは2018年に引退。KinKi Kidsの堂本剛さんも結婚&事務所から退社。少年Aは少年院をでて社会に、本も出版。それだけの月日が経っています。
では1997年の最低賃金は!?
基礎控除等々を178万円にしよう!という流れは最低賃金の上がり幅からと聞きましたので、1997年の最低賃金も確認しておきましょう!
参照 ひと目でわかる!最低賃金https://saichin.net/?y=1997
東京でも700円以下!?やっすーーー!!
2024年度の東京都の最低賃金は1,163円です。1.71倍になっています。
それなのに、壁が変わっていなかったら、働きにくいのは間違いないです。
130万円の壁も早くして欲しい。
税理士事務所からすると、103万円の壁も問題ではありますが、実際に負担が重くなるのは130万円の社会保険料の壁。
実際、YFPクレアのパートさんを見ていると130万円の壁を意識している人が多いです。103万円の壁を意識して入社をしても、税理士事務所に入るとプロが130万円までならそんな負担ないから大丈夫よ~と四方から丁寧な説明が入るから…
社会保険料は税務と比べると、交通費も計算をする、個人の所得が高い人でもマイクロ法人作れば社会保険料が軽くなる、旅行で来た人も加入、3割負担で高額医療を受けられるなどなど何かと制度として雑だと感じています。引き上げの前にするべきことがあるのではないでしょうか?
2020年から所得制限開始(※要注意)
2020年から基礎控除の所得制限ができました。2400万円から段階的に基礎控除が減り、2,500万円になると基礎控除が0円になります。
先に述べた通り、基礎控除は日本国憲法第25条生存権を根拠にあるものです。年収2500万円ある方はカスミでも食って生きていると思っているのでしょうか?注意すべきはこういう所得制限はときの権力者のさじ加減で下げられてしまう可能性があるということです。
基礎控除等の控除は、高所得者有利、高所得者のほうが影響額が大きいとか言う方いますが、それは高所得者の方が高い税率を払っているから。低所得者の溜飲を下げるために、高所得者の生存権を無視して良い…というのは基本的人権の侵害ではないのでしょうか?
1965年の大蔵省メニューは果たして妥当か!?
大蔵省メニューについて再度見てみましょう。
朝:ごはん(170g)・京菜のみそ汁・やきちくわのおろしあえ・たくあん
昼:なっとう・チャーハン・京菜のおひたし・たくあん
夜:ごはん・いかと野菜のみそに・わかめのすまし汁・たくあん・リンゴ
人間に必要なエネルギーや栄養素に関する考え方は私が育つ中でも変わったので、1965年の栄養に関する考え方が100%今と一緒…とは考えられませんが、
このメニューだけを見ると「え?本当に足りるの!?成人男性だよね!?」と言いたくなったのですが、残念ながら私は専門家ではありません。ネットで調べたのですが、それでも答えが見つからないので、チャットGPTに聞いてみることにしました。
結論でいえば、タンパク質と野菜が足りないとのこと。タンパク質不足は体の機能を低下させるそうなので、バリバリ働く成人には欠かせない栄養素です。野菜もタンパク質も現代人に不足しがちな栄養素として有名なので、積極的にとっていきたいですね。
では、話を戻し、少しタンパク質と野菜が足りないレシピだとしても、これをいくらで作れるか?と聞いてみました。
1日の合計コスト
- 朝食:約150円
- 昼食:約180円
- 夕食:約270円
1日の合計費用: 約600円
ということなので、600円×365日=219,000円。
当時の計算では、これらのメニューで年間食費60,096円だったそうなので、約3.6倍。雑な計算にはなりますが、年間の最低限の生活費も3.6倍の674,262円→674,000円といえるのかも知れません。
でも、このメニュー・・・お肉無いですよね…
お肉なしで、成人男性、やっていけるんでしょうか?畑の肉と呼ばれる大豆も、大豆で作った納豆も大好きですが、お肉、食べたいですよね…とても健康志向でヘルシーだとは思うのですが、ヘルシー過ぎて完食に牛丼とか…食べたくなりますよね…ほら…畜産農家さんも頑張ってるんだからさ…美味しく頂こうよ…
基礎控除の歴史から見えたこと
少し話は反れましたが、基礎控除の歴史を振り返ったところでこんなことがわかりました。
- 基礎控除は世の中の状況に合わせて変化しやすい控除
- 過去は消費税が上がったタイミングで基礎控除をあげてた(8%と10%のときはなし)
- 基礎控除の根拠となる庶民の生活を実例として出して計算をした過去もある
- 過去は毎年見直していたもの。長くて5年。27年は異常。
今の状況から考えると年収の壁(所得税103万円、社会保険料130万円)があるために、11月、12月はシフトに入れないパート・アルバイトの方がいたり、賃金をあげたくても年収の壁のせいで、働いて欲しい時間が働けなくなってしまうので上げるにあげられない会社も存在しています。実際、最低賃金も今年も50円あげたのだから、最低限でも50円×働く時間分は基礎控除もあげて欲しい…と思いました。
【まとめ】基礎控除は歴史的に見ても、現状を踏まえてあげてきた控除!
冒頭に述べた通り、以前と比べると物価は上がっています。
40年前の物価と比較すると2~4倍。30年前からある商品と比較すると1.2~1.5倍になっていました。
では、基礎控除はどうか?
27年間、壁は放置されたままです。
この期に及んで、国は国民の生存権よりも税の減収の方ばかりを心配しております。
くどいようですが、基礎控除は歴史的に見ても、【現状】を踏まえてあげてきた控除。ぜひ次の税制改正ではこの物価高を考慮して欲しいと願っております。