「マイクロ法人」ここ数年で知名度が上がり、「知り合いから聞いた!」「YouTubeを見た!」などでご興味を持たれて、ご相談を頂く事が増えています。
そこで、今回はマイクロ法人についていくつかお話しさせて頂きます!
マイクロ法人とは?
そもそも【マイクロ法人】とは、少ない従業員で小規模な事業を行う資本金も小さな法人のことを指します。
実質的にはかなり個人事業主に近い法人形態で、法律で定義づけられた法人ではないという特徴もあります。
株式会社でも合同会社でも、個人に近い小規模な運営ならばマイクロ法人と呼べます。
マイクロ法人のメリット
個人事業と比べて社会的信用が高い
個人事業主の場合、社会的な信用力が足りずに営業や採用が上手く行かないことがあります。しかし、法人化によってその信用力が上がることで、取引がしやすくなったり、採用が上手くいくようになったりするという傾向があるのも事実です。
今後事業を拡大させて従業員を雇う予定があるのであれば、マイクロ法人を設立するのは非常に有効な手であると言えますね。
社会保険料の削減に繋がる
個人事業主と法人を掛け持ちするメリットとして、社会保険料が安くなる可能性があるというものがあります。
個人事業主の場合、国民年金と国民健康保険に加入します。国民年金は定額、国民健康保険は所得に応じて計算します。
法人(会社員)の場合は、厚生年金と健康保険に加入します。どちらも給与に応じて計算します。
ここでの大きな違いは、「健康保険料の計算が所得か給与か」という点です。
どちらも同じに思えますが、所得は変えられない上に事業が軌道に乗れば増えていくのに対し、給与は法人の役員報酬を自由に決めることで調整ができます。
つまり、法人を設立し会社員として健康保険に加入、役員報酬を最低限に設定することで、社会保険料を少なく抑えることができることになります。
一定以上の所得がある場合は、この方法での費用削減がかなり有用となります。
所得税の節税
個人事業主とマイクロ法人を両立させると、それぞれから収入を得ることになります。
結果、個人事業主としての事業所得は青色申告特別控除を受けられ、法人で役員報酬を受け取った分に関しては給与所得控除が受けられるということになります。
控除額が増えることで、所得税の節税に繋がる可能性が非常に高まります。
マイクロ法人設立の注意ポイント
同じ事業を個人事業と法人で分けるのはNG
個人と法人で同じ事業ができない理由は、税金の負担額を調整することができてしまうからです。(租税回避を指摘される)
別事業であれば良いのですが、ご自身では別事業と思っていても他の方から見たら同じ事業と思われる場合がありますので客観的に違うと説明できる様にして専門家に相談して頂くのが良いかと思います。
手間が増える
個人事業と法人で分けて売上や経費を管理する必要がある為、これ迄以上に経理や税務手続きの手間が増えます。
また、個人事業の確定申告の場合はご自身で申告をされる方も多くいらっしゃいますが、法人の場合は税理士に決算申告をお願いされる方が殆どです。
その為、手間が増えるだけではなく、税理士に支払う費用も増えてしまいます。
法人は赤字(利益が出ない)でも税金が発生する
法人の場合は赤字の場合でも「均等割」と言う税金が発生する為、これらについてもあわせてシュミレーションをして頂ければと思います。
マイクロ法人の相談事例
事例1 合同会社を設立
個人事業でコンサル業とホームページ制作をしている。
コンサル業の売上の比重が高く年間900万円程の所得、ホームページ制作は年額100万円前後の所得で社会保険料や所得税のメリットが出ると思い、
合同会社を設立してホームページ業だけ法人に移行し、個人事業では引き続きコンサル業をすることにした。
事例2 株式会社を設立
個人事業で建設工事の下請けと一般家庭からの壁紙等のリフォーム業をしている。
建設業の下請けとリフォーム業の売上はそれぞれ200~500万円程で節税対策と言うよりかは、建設業の方を法人にすることにより安定的に売上が入る可能性が高くなるとの事で、
株式会社を設立して建設業を法人、個人事業はリフォーム業をする事にした。
事例3 事業に差がないため法人化を断念
人材コンサル業で年間900万円前後の所得がありマイクロ法人を模索していたが、
法人と個人でおこなう業務を分ける際に区別がつかないとの事でマイクロ法人を断念した。
他にやりたい業種を決めた際にそちらをマイクロ法人で活動する予定となる。
事例4 メリットが小さいため法人化を断念
節税等の効果が若干見込めたが、年間数万円の削減の為に法人設立や設立後の手間、廃業の手続き等を考えるとあまりメリットを感じない為にこのままにした。
おわりに
個人と法人の両方で運営していく場合は事務処理がこれまでより複雑になったり、設立をしたけどもメリットが少なく設立しなければ良かったと言われる方も一定数いらっしゃるので、今一度ご検討して頂ければと思います。