「所得があったら申告が必要で、申告には簿記ってやつが必要らしい。でも簿記ってなに?」
そんなあなたの疑問に答えます。
はじめに
「税務だの財務だの言われたって、簿記ってやつすらよくわかんないのにどうしたらいいのか……」
こんなご相談は意外と少なくありません。
日本にいる以上納税の義務はついて回りますし、事業を行うにあたって財務からは逃れられません。
これらを分かりやすくしてくれる、判断材料をくれるものが『簿記』です。
しかし、数字が得意でない方が真っ先につまずいてしまうのも『簿記』。
このコラムでは、「簿記とは何か」から、その種類と選び方までをまとめました。
ぜひお役立てください♪
簿記の基本的な役割とは
簿記は、会社や個人のお金の動きをきちんと記録して整理するための方法です。
日々の取引を正確に記録することで、お金の流れや会社の経営状態をしっかりと把握できます。簿記によって作成されたデータは、税金の申告や経営の判断に役立ちます。
また、投資家や銀行などの関係者に会社の信頼性を示すためにも重要です。
簿記は、経営と税務の両方でとても大切な役割を果たしています。
なぜ簿記方法の違いが重要なのか
簿記方法には主に「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。これらの方法にはそれぞれ異なる特徴があり、適切な方法を選ぶことが経営や税務管理において重要です。
- 単式簿記
単式簿記は、簡単に言えば「家計簿」のようなものです。収入と支出を一つの項目として記録する方法で、小規模な事業や個人の家計管理に適しています。 - 複式簿記
複式簿記は、取引を「借方」と「貸方」に分けて記録する方法です。例えば、ある商品を購入した場合、その支出と同時に資産の増加も記録されます。複式簿記は企業の全体的な財務状況を把握するのに適しています。
簿記方法の選択は、事業規模や目的に応じて行う必要があります。小規模な事業では単式簿記でも十分な場合がありますが、企業が成長するにつれて、複式簿記に移行することが推奨されます。
複式簿記は、企業の財務状況をより正確に反映し、経営管理や税務申告の信頼性を高めるため、長期的に見て非常に重要です。
このように、単式簿記と複式簿記にはそれぞれの特徴があり、事業の状況やニーズに応じて適切な方法を選ぶことが、経営の成功にとって大切です。
単式簿記と複式簿記の違い
まずはざっくりと、ふたつの方式の違いを比べてみます。
表にまとめました。
比較項目 | 単式簿記 | 複式簿記 |
---|---|---|
記帳の基本構造 | 「入金」「出金」で表す 家計簿に近い | 「借方」「貸方」で表す どちらが欠けても機能しない |
取引の記録方法 | 一つの取引につき、ひとつの記録 | 一つの取引につき、ふたつの記録 |
財務状況の把握 | 日々の収支が把握しやすく、小規模な事業の管理に向いている | 事業全体の資産や費用等が把握しやすく、財務諸表の作成に向いている |
記帳の複雑さ | シンプル 会計・簿記の知識が少なくても対応可能 | 複雑 きちんとした専門知識があれば対応可能 |
取引の記録範囲 | 現金にまつわる記録のみ | 事業に関わる全ての取引を記録 |
記録の正確さ | 比較的低い 単一の記録かつ現金の収支のみのため、事業全体の財務状況を把握しづらく、ミス・不正を見逃しやすい | 高い 全ての取引を二重記録するため、取引記録の完全性を担保でき、ミス・不正を発見しやすい |
単式簿記は、収入や支出を単一の項目として記録するシンプルな方法で、小規模事業や個人の財務管理に適していますが、資産や負債の詳細な管理が難しい点があります。
一方、複式簿記は、すべての取引を「借方」と「貸方」に分けて記録し、財務状況を正確に把握できる方法です。これにより、企業の透明性や信頼性が高まります。
ここからは、それぞれの方式について詳しく紹介していきます。
単式簿記とは何か
単式簿記は、収入や支出を単一の項目として記録する方法で、家計簿に似たシンプルな記帳方式で、小規模な事業や個人の財務管理に適しています。
取引を単純に記録するため、詳細な管理や全体的な財務状況の把握には限界がありますが、特に会計の知識がないという人でも容易に利用できます。
単式簿記の利用例
単式簿記での記帳はシンプルで、取引ごとに収入や支出を一つの項目として記録します。以下に、具体的な記帳の例を2つ紹介します。
例1: 個人の家計簿
状況: 家計の管理のために単式簿記を利用している場合
取引1: 8月1日、給料として200,000円が銀行口座に振り込まれた。
- 記帳:
- 日付: 8月1日
- 内容: 給料収入
- 収入: 200,000円
- 支出: –
- 差引残高: 200,000円
取引2: 8月3日、スーパーでの食料品購入に5,000円を現金で支払った。
- 記帳:
- 日付: 8月3日
- 内容: 食料品購入
- 収入: –
- 支出: 5,000円
- 差引残高: 195,000円
例2: 小規模事業の収支管理
状況: 個人で営むカフェの収支を単式簿記で管理している場合
取引1: 8月5日、1日の売上として30,000円を現金で受け取った。
- 記帳:
- 日付: 8月5日
- 内容: 売上収入
- 収入: 30,000円
- 支出: –
- 差引残高: 30,000円
取引2: 8月6日、コーヒー豆の仕入れに10,000円を支払った。
- 記帳:
- 日付: 8月6日
- 内容: コーヒー豆仕入れ
- 収入: –
- 支出: 10,000円
- 差引残高: 20,000円
これらの例では、収入や支出をシンプルに記録して、日々の残高を把握することができます。単式簿記は、このような日常的な収支管理に非常に有用です。
単式簿記のメリットとデメリット
このように、単式簿記はシンプルで使いやすく、特に白色申告での利用が認められている点はメリットですが、詳細な財務管理や外部報告には限界がある点も考慮する必要があります。
複式簿記とは何か
複式簿記は、すべての取引を「借方」と「貸方」の二つの側面で記録する方法です。
例えば、商品を現金で購入した場合、手元では「商品が増えた」という現象と、「現金が減った」という現象が同時に起きます。これをそれぞれ記録し、取引の二重性を反映させることで、正確な財務管理や透明性の向上や不正防止に役立ち、企業の信頼性を高めることもできます。
複式簿記の利用例
複式簿記の利用例は、企業の日常的な取引を正確に記録・管理するために広く使われています。以下に、いくつかの具体的な利用例を挙げます。
商品販売の記帳
状況: 企業が10万円の商品を販売し、代金を現金で受け取った場合。
- 借方: 現金 10万円
- 貸方: 売上 10万円
解説: この取引では、「現金が増えた」という状況と「商品が売れて減った(=売上が増えた)」という状況が発生し、記録されています。
設備の購入
状況: 企業が50万円の設備を現金で購入した場合。
- 借方: 設備 50万円
- 貸方: 現金 50万円
解説: この取引では「新しい設備が増えた」「現金が減った」という状況が発生し、それぞれ記録されています。
これらの例を通じて、複式簿記がどのように企業の取引を二重に記録し、正確な財務情報を提供するかがわかります。この方法は、企業が資産、負債、収益、費用を詳細に管理し、正確な経営判断を下すために不可欠です。
複式簿記のメリットとデメリット
複式簿記には、企業の財務管理において多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。以下に、複式簿記の主なメリットとデメリットをまとめます。
複式簿記は、企業の財務管理を強化し、信頼性の高い情報を提供するために非常に有用ですが、その導入と運用にはコストと労力が伴います。事業の規模やニーズに応じて、最適な簿記方法を選ぶことが重要です。
どちらを選ぶべきか?
簿記の方式を選ぶ際には、事業の規模や複雑さ、経営の目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
さまざまな事業形態に応じた選択のポイントを説明します。
個人事業主やフリーランス
単式簿記がおすすめ
収入と支出が比較的少なく、シンプルな取引が中心となる個人事業主やフリーランスの場合、単式簿記が適しています。
家計簿の延長として、日々の収支を手軽に管理でき、記帳にかかる手間も少ないため、特別な会計知識がなくても運用できます。
また、白色申告を選択することで、単式簿記でも税務申告が可能です。
小規模な店舗や小規模ビジネス
単式簿記から始めて複式簿記へ移行を検討
小規模な店舗やビジネスでは、取引がまだシンプルであれば、最初は単式簿記で十分な場合があります。
ただし、売掛金や買掛金、在庫管理が発生する場合は、複式簿記への移行を検討するとよいでしょう。
複式簿記は、ビジネスが成長し、取引が複雑になるにつれて、財務管理の正確さと信頼性を高めるために役立ちます。
中規模企業
複式簿記が必要
中規模企業では、取引の数や内容が複雑化し、資産管理や負債管理、詳細な財務分析が必要になります。このため、複式簿記が推奨されます。
複式簿記により、正確な財務諸表を作成し、経営の透明性を確保できるため、外部の投資家や金融機関からの信頼を得やすくなります。
また、青色申告の特典を最大限に活用するためにも、複式簿記が求められます。
大企業や法人
複式簿記が必須
大企業や法人では、取引が非常に複雑であり、厳密な財務管理が必要です。
複式簿記は、企業のすべての財務取引を網羅し、正確な貸借対照表や損益計算書を作成するのに不可欠です。
これにより、経営陣は正確なデータに基づいて戦略的な意思決定を行えますし、ステークホルダーに対する説明責任も果たせます。
法的に複式簿記が義務付けられている場合も多く、導入は必須です。
おわりに
いかがでしたか?
簿記の重要性と、ご自身の状況によって方式を使い分けていくことの意義が伝わっていれば幸いです。
今後も簿記についての詳しい情報をお届けしていきますのでお楽しみに!
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