オフィスに癒しを――。
Web業界では、自由な発想で「ペットのいるオフィス」づくりに取り組む企業もあります。猫、犬、熱帯魚、ウーパールーパー…。一見ユニークな取り組みに見えますが、そこに「これ、経費にできる?」という疑問が生まれることも。
結論から言うと、ペットの経費化は、かなりハードルが高いのが実情です。
以下、現実的な視点で整理します。
目次
経費の原則は「事業に必要な支出であること」
税務上、経費として認められるには、「その支出が事業に直接必要であること」が前提です。
単なる社内の癒しや雰囲気作り、社員満足の向上は、原則として経費化の根拠にはなりません。
「なんとなく癒されるから」
「社員のモチベーションが上がるから」
「みんなに人気だから」
このような理由では、税務上は否認される可能性が極めて高いと考えておくべきです。
経費化の可能性がある例
それでも、ごく一部のケースでは、経費化が認められる余地があります。
ただし、相応の準備と実態が必要です。
- SNSや広報活動における明確な活用
→ 広報目的で継続的に登場し、企業イメージに寄与している場合のみ - 受付やショールームなど、明確な接客機能としての設置
→ 目的・業務上の必要性が明文化されていることが前提 - YouTube等で収益が発生している場合
→ 動物の登場が「収入の原因」であることが明確で、関連性を証明できる場合のみ
※いずれも「たまたま映ってる」「偶然置いてある」レベルでは認められません。
経費化が難しい典型例
- 単に社員の癒し目的で飼っている
- 自宅兼オフィスなど、私的利用と業務利用の線引きが曖昧
- 購入費用が高額で、収益との関係性が説明できない
- HPやSNSに一度登場した程度で「広報に使っている」と主張する
このようなケースでは、ほぼ確実に経費として認められません。
どうしても経費にしたいなら、ここまでやる
それでも経費計上したい場合は、以下のような条件をすべて満たす覚悟が必要です。
- 導入目的と業務との関連を明文化し、社内資料化する
- 実際に企業活動(広報・接客・収益)に使用している証拠を残す
- 継続的な使用実績を示せるSNS投稿・資料・記録がある
- 勘定科目を適切に分類し、税理士と事前に相談しておく
つまり、何度も申し上げた通り「かわいいから置いた」では絶対に通らないということです。
まとめ|“節税になるかも”と期待しない。まずは「本当に必要か」を考える
ペットを取り入れたオフィス環境は、クリエイティブで柔軟な企業文化の一つです。
しかし、それと経費処理はまったく別の話です。
「もしかして節税になるかも」といった軽い期待で処理してしまうと、後の税務調査で思わぬリスクを招く可能性もあります。
まず考えるべきは、「この支出は事業に本当に必要か?」「経費にする理由を説明できるか?」です。
経費化は“目的と実態”がすべて。
ペット導入はあくまで“文化的投資”と割り切ったうえで、どうしても経費にしたい場合のみ、十分な準備と相談のもとで進めるべきです。








